2016.3
 

 


File number 008

デスバレー国立公園
(誰も見ていない時に勝手に動く石)

アメリカ合衆国カリフォルニア州。
ロサンゼルスの北東約320kmに位置する、デスバレー国立公園。

デスバレー国立公園には勝手に石が動く場所がある。
この現象が見られる場所は公園の北西部奥「レーストラック・プラヤ」という塩類の乾燥平野だ。
夏は気温が高く晴天が続き、冬になると標高1100mのこの地は、かなり気温が下がり雨や雪が降る。

重さ300k以上もある石が動きまわり、動いたあとには足跡のように痕跡が残る。
これまで科学者による集められたデータによると、石の移動は南西から北東方面に移動している。
「レーストラック・プラヤ」に吹く風向きと一致しているが、すべての石がこの方向に移動するわけではない。
北から南に移動する石もあれば西に移動する石もある。

石は人が歩く速さで移動すると考えられているが、石が動く瞬間を目撃した者は存在しない。

風の力で動いたのか?
水の力で動いたのか?、この不思議な現象はまだ解明されていないのである。

強風が原因とする説が多いが、人が持ち上げられない重さの石が風で動くとは考えられない。
サンノゼ州立大学のメッシーナ教授によると、石の移動に法則性がなく、ひとつひとの石が勝手に移動しているという。
移動の距離、パターンは石の大きさや形、組成にまったく関係ない事が明らかになった。

NASAゴダード宇宙飛行センターが主催する大学生と大学院生による研究プロジェクトによると、この不思議な現象の仮説として可能性が高いのは、冬にプラヤ周辺の丘から流れ込んだ水が凍り、石の周りに氷の輪が形成されその“輪”に乗って石が浮遊するように移動するというのである。

しかし、地表に残った水と強い風ですべてが説明できるわけではない。
同じ大きさの石が同じ風に吹かれても同じ痕跡を残さない、現場にはまったく動かない石もあるのだ。

多くの仮説が唱えられてきたこの現象も、米国の研究チームがその仕組みを解明。
2013年11月から14年2月の間、プラヤ(塩湖の跡)の底に雨水の巨大池が形成され、その後数週間かけて凍結して溶け、複数の動きが起こった。

2013年11月、10年に1度といわれる大雨(3日間降り続いた)でレーストラック・プラヤは巨大な湖に変わった。

観測を重ねた研究チームは、最終的に、雨が溜まって凍ることで、プラヤの表面に巨大な氷が窓ガラス状に形成され、これが溶けかかって複数の破片になったときに、ちょうどよく時速11〜16km(風速3〜4.5m)の風が吹けば、それと一緒に石が動くのだと結論した。

1.冬に雨が降って石の周囲が池になり、池が夜の冷え込みで凍る



2.日が昇るとともに氷が融けて割れる



3.割れた氷が風に吹かれて、水深7cm ほどの池の上を移動する、動く速さは1分間に4〜5m



4.同時に石を押して移動させる

そして水が干上がると移動した跡だけが残り、石が勝手に動いたように見えるというわけだ。