2020.12
 

 


File number 045

静岡県の遠州地方には、古くから伝わる七つの不思議がある。
七不思議の組み合わせは諸説あり、合わせると7つ以上存在する。


■小夜の中山夜泣き石(掛川市佐夜鹿)
国道1号小夜の中山トンネルの手前の道路脇にあり、夜になると泣くという伝説がある。

その昔、お石という身重の女が小夜の中山に住んでいた。
ある日お石がふもとの菊川の里で仕事をして帰る途中、中山の丸石の松の根元で陣痛に見舞われ苦しんでいた。
そこを通りがかった轟業右衛門という男がしばらく介抱していたのだが、お石が金を持っていることを知ると斬り殺して金を奪い逃げ去った。
その時お石の傷口から子供が生まれた。
そばにあった丸石にお石の霊が乗り移って夜毎に泣いたため、里の者はその石を『夜泣き石』と呼んでおそれた。
生まれた子は、通りがかった久延寺の和尚に発見され、音八と名付けられて育てられた。
音八は成長すると、大和の国の刀研師の弟子となり、評判の刀研師となった。
ある日、音八は客の持ってきた刀を見て「いい刀だが、刃先に大きな刃こぼれしているのが実に残念だ」というと、客は「かつて遠州の山の中で石に刀を当ててしまった」と話した。
音八はこの客が母の仇と知り、名乗りをあげて恨みをはらしたということである。
その後、この話を聞き同情した弘法大師が、石に仏号をきざんでいったという。

石には仏号の文字らしき跡や刀傷らしき跡が残っている。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■池の平の幻の池(浜松市天竜区水窪町池の平)

静岡県浜松市天竜区の「亀ノ甲山/標高約880m」、北側の標高650m付近に7年に1度、普段は水がないのに、7年に1度、周囲約200メートルの大きさで水が湧き出し、1週間ほどあらわれて消える幻の池がある。

ふだんは一滴の水もない山頂のくぼみに水がこんこんと湧き出し、佐倉ヶ池に住む竜神が諏訪湖に行く際、池の平で休息するという。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■子生まれ石(牧之原市西萩間、大興寺)
龍門山大興寺の住職が往生するころになると、裏山の沢の崖の壁から石が生れるという。

とんでもファイル File number 002 遠州七不思議の1つ「子生まれ石」を参照。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■桜ヶ池の大蛇(御前崎市佐倉、池宮神社)

平安末期の1169年6月13日、比叡山の皇円阿闍利が56億7000万年後に現れるという弥勒菩薩に教えを乞うと言い残し、自ら桜ヶ池の底に沈んで竜神になったと伝えられてる。
以降、秋の彼岸の中日には赤飯を詰めたお櫃を池に沈めて竜神に供える奇祭「お櫃納め」が行われ、数日後には空になったお櫃が浮いてくると言われるようになった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■能満寺のソテツ(吉田町片岡、能満寺)
能満寺にある樹齢1000年のソテツは、高さ約6メートル枝数約90本あり、大阪の妙国寺のソテツ、静岡市清水区の龍華寺のソテツとともに、「日本三大ソテツ」のひとつに数えられ、国の天然記念物に指定されている。

能満寺のソテツには2つの言い伝えがある。

大蛇とソテツ
安倍晴明が大井川を流れて来た大蛇を葬り、その上にソテツを植えた。
すると、ソテツは、大蛇の精をうけて大きく大蛇のような姿になったので、安倍晴明は、人々に害を与えないように大蛇の精を封じたと言われている。

泣いたソテツ
徳川家康が能満寺を訪れたとき、ソテツのみごとさに感心して「このソテツを欲しい」と和尚に頼んだ。
家康の頼みに、和尚は仕方なくソテツを掘り起こし、船に乗せて駿府城へと運びこんだ。
すると数日後の夜から、毎夜、城の庭で人の泣く声がする。調べてみると、「能満寺へ帰りたい。能満寺へ帰りたい。」とソテツが泣いていることがわかった。
家康は、かわいそうなことをしてしまったと思い、仕方なく、またソテツを能満寺へ送り返したという。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■晴明塚(掛川市大渕)
陰陽師の安倍晴明にまつわるもので、遠州七不思議のひとつに数えられる。

旧:横須賀町(現:掛川市)は、しばしば津波の害に襲われた。
ある時京で名高い陰陽師安倍晴明がこの地を訪れ、村人に請われて祈祷をした。
その際、あずき色の石を積み重ねたという。
その祈祷の甲斐あってかこの地では以後津波の害がなくなったと言われる。
現在では疫病除けの願をかけて赤または小豆色の石を塚からひとつもらってきてお守りとし、もしも願がかなったなら、二つの赤い石を塚に戻すとよいという。
どんな色の石を持ってきてもあずき色に変わるとの伝承がある。

◆◆◆◆◆◆◆◆

■無間の鐘(掛川市東山、粟ヶ岳 / 阿波々神社)

その昔、つけば何でも願い事がかなうという「無間の鐘」が粟ヶ岳山頂に掛かっていた。
多くの者が争うように険しい粟ヶ岳の山道を登り、金持ちになれるように祈願して鐘をつくようになった。
登山の途中で渓谷に落ちて命をおとす者もいたため、住職が「無間の鐘」を井戸に埋めて人々の欲望を封印したという。

阿波々神社には「無間の鐘」を埋めたという「無間の井戸」があり、現在ではパワースポットとして人気がある。